薬剤耐性菌が抗菌性物質を使用する医療・獣医療・農業分野に限らず,食品や環境にも存在することが明らかにされ,幅広い分野が協力し合いながら薬剤耐性菌の対策を構築することが必要になっている.
私たちの身の回りでは,家畜やペットのほか,野生動物や野鳥などさまざまな動物が生活している.動物における薬剤耐性菌の保有状況は,抗菌薬の使用状況や生活環境が関係することが知られているが,動物が保有する耐性菌がヒトへ伝播するのか,薬剤耐性遺伝子がヒトの常在菌や病原細菌へ伝播するのかについては,十分に解明されているわけではない.
薬剤耐性菌が伝播する頻度や様式は,動物の役割などが関係する.家畜-畜産食品に関係する薬剤耐性菌の影響については,リスク分析の手法がとられているが,ペットや野生動物についてリスク分析する必要があるのか,仮にリスク分析が必要としても十分な情報が不足しているのが現状である.
本稿では動物に分布する薬剤耐性菌の状況,ヒトへ伝播することが想定される様式,その影響程度について紹介する.