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特集2 EWGSOP2論文の翻訳とQ and A

サルコペニア:定義と診断に関する欧州のコンセンサス改訂の翻訳とQ and A

荒井秀典木下かほり吉村芳弘石井好二郎小川純人葛谷雅文重本和宏山田実鈴木規雄上島順子三浦絵理子神野麻耶子黄啓徳若林秀隆

日本サルコペニア・フレイル学会誌 Vol.3 No.1, 37-66, 2019

[背景]2010年にEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によってサルコペニアの診断と治療を進めるためにサルコペニアの定義が発表された。2018年の初頭にワーキンググループ(EWGSOP2)はこれまでに構築されたエビデンスを反映するために,元の定義を改訂した。この論文は,最新の所見に基づいて作成された。
[目的]サルコペニアに関する研究デザインと臨床診断,およびサルコペニアの治療に関する整合性の向上を目的とする。
[推奨事項]サルコペニアは生涯を通じて発生する筋肉の有害な変化に起因する骨格筋疾患(筋障害)である。一般的に高齢者に多く発症するが,より若い年齢でも発症する。今回の新たなコンセンサスでの推奨事項は以下のとおりである。
1.筋力低下をサルコペニアの主要な特徴として重視する。さらに骨格筋量や筋肉の質の低下があればサルコペニアと確定診断する。加えて,身体機能低下を認めた場合に重症サルコペニアとする。
2.サルコペニアの症例発見,確定診断および重症度判定に使用できるよう臨床的アルゴリズムを改訂する。
3.サルコペニアの判別および特定するための測定項目について,明確なカットオフ値を提示する。
[結論]EWGSOP2により改訂された推奨は,サルコペニアとそのリスクに対する認識の向上を目的としている。新たな推奨事項とともに,EWGSOP2はサルコペニアのリスクがある患者の早期発見と治療を促すことを医療従事者に求めている。また,患者や医療システムの負担となる健康への悪影響の発現を予防または遅らせることを目的としてサルコペニア分野においてさらなる研究が行われることを期待する。
「KEY WORDS」サルコペニア,筋力,身体機能,筋評価,EWGSOP2,高齢者

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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