腎細胞癌は限局例に対しては外科的切除が効果的であるが,20~40%が再発する.再発患者および有転移症例にはおもに薬物療法が推奨されている.最新のEAUガイドライン(European association of urology guidelines)ではチロシンキナーゼ阻害剤および免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor:ICI)を用いた治療法が標準療法として提示されている1).腎細胞癌にはいくつかの組織型があり,それぞれ異なる遺伝子異常の組み合わせによって生じ,固有の臨床経過を示す.近年,免疫機能を調節する分子であるPD-1(programmed cell death-1)もしくはPD-L1(programmed cell death 1-ligand 1)を標的とするICIによる抗腫瘍効果が示されてきており2),腎細胞癌を含めた種々のがん種に適応されている.抗PD-1抗体であるニボルマブ単剤および抗CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte antigen-4)抗体であるイピリムマブとの併用などが従来の化学療法より効果的であるとする報告がなされている3, 4).近年ではチロシンキナーゼ阻害剤であるアキシチニブと抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ,もしくは抗PD-L1抗体であるアベルマブの併用の有用性が報告されている5, 6).抗VEGF(vascular endothelial growth factor)抗体であるベバシズマブとPD-L1抗体であるアテゾリズマブの併用の有用性が報告されている7).しかしながら,これらのICIの抗腫瘍効果機序は未解明な点が多いのが現状である.
本稿では,ICI治療におけるバイオマーカー,とくにVEGF,制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)およびmyeloid-derived suppressor cells(MDSC)について,最新の研究をもとに解説する.