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美容皮膚科講義

Paper No.1 北欧で夏季休暇を過ごした小児にみられる,血清25-ヒドロキシビタミンD₃のわずかな上昇と皮膚細胞DNAが受ける高度な光損傷

髙市美佳

Bella Pelle Vol.4 No.2, 50, 2019

背景:小児期の太陽紫外線(UVR)曝露は,その後の人生における皮膚癌罹患リスクを増大させる.これは,UVRが突然変異を引き起こすシクロブタンピリミジン二量体(CPD)を誘発することに関連している.一方で,太陽UVRはビタミンD生成をおもに担っており,小児期の健康な骨の形成に欠かせないものでもある.
目的:バルト海(北緯54度)海岸で12日間の休暇を過ごした32名の健康なポーランド人の小児(スキンタイプⅠ~Ⅳ)を対象とし,海岸での夏季休暇が血清25-ヒドロキシビタミンD₃(25(OH)D₃)およびCPDに及ぼす影響を検討する.
方法:休暇前後に血液と尿を採取し,25(OH)D₃と尿中に排泄されたCPDを計測した.また,個人のUVR曝露量を計測した.日光浴,日焼け,日焼け止めの使用は日記として記録された.休暇前後の皮膚の発赤と色素沈着を反射分光度計で計測した.
結果:日常的なUVR曝露量の平均値±標準偏差は,紅斑反応が起こる境界値である2.4±1.5標準紅斑量(SEDs)であった.25(OH)D₃濃度の平均値は,64.7±13.3から1.24±0.19倍の79.3±18.7nmol/L(P<0.001)に上昇した.平均CPDは,26.9±17.9~12.6±10.0倍の248.9±113.4fmol/μmoL(クレアチニン補正値,p<0.001)となった.25(OH)D₃が上昇した一方で,発癌性にかかわるDNA損傷も著しく増加したことがわかった.全般的に,スキンタイプの違いは行動,臨床,分析結果に有意な影響を及ぼさなかったが,休暇終了時の比較においては,スキンタイプⅢ,Ⅳよりも,スキンタイプⅠ,ⅡでCPDがより多く認められた(補正前p=0.0496).
結論:小児期のUVR曝露による健康状態の転帰は,リスクと有益性をもっとよく理解したうえで慎重に考慮する必要がある.北欧においてさえも,小児にはしっかりとした日光の防御が必要である.
「KEY WORDS」太陽紫外線,ビタミンD,DNA損傷

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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