DNAのメチル化的年齢は,自然老化の正確なバイオマーカーで,寿命を予測するが,その背景にある分子メカニズムは不明である.9,907人の被験者に対して行われたゲノムワイド関連解析(genome–wide association study;GWAS)により,内因性エピジェネティック的加齢加速(intrinsic epigenetic age acceleration;IEAA)と関連する5つの遺伝子座,外因性エピジェネティック的加齢加速(extrinsic epigenetic age acceleration;EEAA)と関連する3つの遺伝子座が発見された.メンデルランダム化解析により,初経と閉経がIEAAの原因となり得ること,リポ蛋白質がIEAAとEEAAの原因となり得ることが示唆された.白血球のテロメア長(leukocyte telomere length;LTL)が長いことと関連している,テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase;TERT)遺伝子中の遺伝子変異は,逆説的に高いIEAAと相関していた(P<2.7×10–11).因果モデルにより,TERT特異的で独立した,LTLとIEAAに対する効果が示された.初代ヒト線維芽細胞における実験的なヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human TERT;hTERT)の発現により,細胞集団の倍加数に比例してDNAメチル化的年齢は増加した.これらの結果から,hTERTは,すでに確立されている細胞分裂に依存したテロメア長の短化を代償する役割に加え,エピジェネティック的年齢の制御においても重要な役割を果たしていることが示唆された.
「KEY WORDS」DNAメチル化,ゲノムワイド関連解析(GWAS),内因性エピジェネティック的加齢加速(IEAA),外因性エピジェネティック的加齢加速(EEAA),ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)