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Theme 門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症 State of the Art

門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症:消化器・肝臓内科からの視点(肝移植の基準などを含めて)

厚川正則

Pulmonary Hypertension Update Vol.8 No.2, 26-33, 2022

一部の慢性肝疾患患者では,肝線維化の進展に伴い肝硬変へ病態が進行し,門脈圧亢進症を呈するようになる。門脈圧亢進症に伴う随伴症状は胃・食道静脈瘤,腹水症,脾腫などさまざまあるが,肝外病変の1つとして門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症(PoPH)の存在が知られている。しかし,わが国におけるPoPHの疫学や特徴に関する詳細な報告は少ないうえに,無治療の場合にPoPHの予後は不良であるにもかかわらず,消化器内科医あるいは肝臓内科医におけるPoPHの概念の認識やスクリーニングの実施は不十分であると言わざるを得ない。既報によると,肝障害度あるいは重症度とPoPHの合併の有無には関連がないことが示されており,門脈圧亢進症を伴う症例においては全例にPoPH合併の可能性を念頭に置きながら,問診や心エコー図検査などを用いて早期の診断を行うことが推奨されている。筆者は現在,PoPHのスクリーニングを簡便に施行するための取り組みを行っている。本稿ではPoPHに関する既報のレビューとともに,肝硬変あるいは門脈圧亢進症を合併する肝疾患患者のうち,どのような患者を積極的にスクリーニングするかについて私見も交えて解説する。
「KEY WORDS」肺高血圧症,門脈圧亢進症,門脈肺高血圧症,肝硬変,スクリーニング

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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