目でみる肺高血圧症
門脈体循環シャントの画像診断
Pulmonary Hypertension Update Vol.8 No.2, 4-7, 2022
門脈体循環シャントは先天性と二次性に分けられ,肝硬変などの肝疾患を伴わないものを先天性門脈体循環シャントと診断する。先天性門脈体循環シャントは先天的な血管奇形であり,胎生期の血管退縮や血管新生が関わっている。内臓錯位症候群との関連もいわれており1),何かしらの遺伝学的背景が存在する可能性を否定できない。新生児代謝スクリーニングでの高ガラクトース血症から診断に至ることも最近多くなっているが,肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)や肝性脳症の出現が診断の契機になっていることも少なくない。また,偶発的に撮像されたCTやMRI,血管造影などからシャント血管の存在を疑う場合もある。このように先天性門脈体循環シャントはいくつかの合併症をもっており,なかでも致死的であるのがPHである2)。本来肝臓で代謝されるはずの血管収縮物質がそのまま肺循環へ流れることで,肺血管の収縮が起こることが1つの要因とされている2)。また,先天性門脈体循環シャントでは高心拍出の血行動態となっており,肺血流が増加することによるシェアストレスの上昇により血管収縮が起こることも原因と考えられている。一方で,血管拡張が要因と考えられる肺動静脈瘻の出現(肝肺症候群)も合併症の1つであり,肺血管の収縮と拡張というバランスの破綻がいずれかの合併症を引き起こしうると考える。
治療としてはシャント血管を治療(塞栓)することが根本的な解決になりうるが,必ずしもPHの程度を改善させるとは限らず,肺血管拡張薬の継続投与が必要な場合も少なくない。つまり,可逆性がないことも予測される。しかしながら,筆者たちはシャント塞栓をすることで少なくともPHの進行を防ぐことはできるのではないかと推察している3)。血清アンモニアや総胆汁酸,血清マンガンはシャント血管の有無や治療効果判定に有用であり,特に血清アンモニアや総胆汁酸は日常診療で比較的頻繁に用いられる指標で,簡便に検査できる。最近,フォンタン循環と門脈体循環シャントの関係についても注目が集まっている。先天的なのか,フォンタン循環に伴う門脈圧亢進症から二次的に出現するのか,判断が非常に難しい4)。ただ,門脈体循環シャントの存在が高心拍出のフォンタン循環と関連している可能性があり,フォンタン循環の管理を考えるうえで重要な要素といえる。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。