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タイプ別肺高血圧症診療のポイント

左心性心疾患に関連した肺高血圧症診療のポイント

杉村宏一郎

Pulmonary Hypertension Update Vol.7 No.1, 42-47, 2021

左心性心疾患(left heart disease:LHD)に伴う肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)(PH-LHD)は,PHの臨床分類では第2群に分類され,最も頻度が高いといわれている。PHの機序として弁膜疾患や左室流入障害をきたすLHDに起因する左房圧の上昇が,圧伝播により肺静脈圧,そして肺動脈圧の慢性的な圧上昇に伴い肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)に認められるような肺血管の組織的変化が加わりさらなる肺動脈圧の上昇をきたす。しかし,このPHの存在が心不全において特別な意味をもっているのか,単なる左心不全の重症度による一事象にすぎないのか,いまだに議論の余地がある。治療としてPH-LHDに対する肺血管拡張薬の有効性はいまだに臨床試験において示されていない。そこで現時点の問題点として,PH-LHDのPAHへの誤分類は,多剤併用が主流であるPAH治療において,間違った治療戦略につながる可能性があるため,PH-LHDとPAHの正確な鑑別診断が重要となってくる。しかし,重症心不全の症例のなかには,肺血管抵抗(PVR)の上昇を伴う症例も存在し,心移植登録や右心不全管理において肺血管拡張薬の投与を検討しなければならない症例が存在することも確かである。本稿においては,定義・診断・治療について問題点を含めながら議論を進めたい。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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