多数の肺血管拡張薬が使用可能となり,肺動脈性肺高血圧症(PAH)診療は著しく進歩した。世界各国のレジストリーでも短期予後は改善し,PAHは治療可能な疾患となった。しかしながら,長期予後を考慮した場合,PAHは依然として難病である。近年,治療のさらなる進歩を目的として治療戦略に関する議論が盛んに行われている。2015年に欧州心臓病学会(ESC)/欧州呼吸器学会(ERS)の合同肺高血圧症(PH)診断と治療ガイドラインにおいてPAHのリスク因子がクローズアップされ,リスクアセスメントに基づく治療戦略を推奨する報告が大勢となった。2018年の第6回肺高血圧症ワールドシンポジウム(6th WSPH)ではこのリスク因子の簡略化が提案され,リスクアセスメントに基づく治療戦略が今後のPAH治療戦略のスタンダードとなろうとしている。本稿では「リスクアセスメントの罪過」と題し,リスクアセスメントの負の側面について概説する。
「KEY WORDS」肺動脈性肺高血圧症(PAH),リスクアセスメント,平均肺動脈圧(mPAP),長期予後