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基礎 サイクリン依存性キナーゼを標的とした肺動脈性肺高血圧症の治療戦略
Pulmonary Hypertension Update Vol.5 No.2, 64-65, 2019
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の重要な病理学的特徴は,肺小動脈の再構築(リモデリング)である。肺動脈リモデリングは,血管平滑筋細胞・血管内皮細胞・線維芽細胞の異常増殖とアポトーシス耐性によって生じている。肺動脈リモデリングは,肺血管閉塞を引き起こし,肺動脈圧上昇・右心室負荷増大に繋がる。そのため,構造的リモデリングプロセスを標的にしたPAH治療戦略が有効であると考えられるが,現在利用可能なPAH治療薬は,血管拡張に焦点を合わせている。
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)およびサイクリンは,細胞周期(S期→G2期→M期→G1期)の回転を促進する蛋白質であり,CDK-サイクリン複合体を形成することによって,協調的に細胞周期を進行させる。たとえば,がん細胞では,G1期からS期への移行に,CDK4-サイクリンD複合体やCDK6-サイクリンD複合体が関与する。現在,がん細胞の異常増殖を選択的に抑制する抗がん剤として,CDK阻害薬の開発が進んでおり,最近では,CDK4/6阻害薬であるパルボシクリブが,進行性乳がんの治療薬として承認された。本研究では,パルボシクリブが,肺血管細胞の異常増殖を抑制することによって,PAHに奏効する可能性について,検討した。
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