目でみる肺高血圧症
肺高血圧症における肺血流シンチグラフィの有用性
Pulmonary Hypertension Update Vol.5 No.2, 4-8, 2019
かつて肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は,原因不明で特効薬のない難治性疾患として捉えられてきた。しかし,最近10年の間に有効な治療薬や治療法が続々と開発され,PHの治療は大きく変貌を遂げた。特に,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)の登場は,CTEPHに対する治療を様変わりさせた。このためPHの生命予後改善は,早期の適切な診断にかかっているといっても過言ではない。肺血流シンチグラフィは,肺の血流分布を可視化できる数少ない画像診断モダリティであり,その有用性は以前から高く評価され,PH関連疾患の鑑別診断に利用されてきた1)。しかし,最近ではCTやMRIの発達に伴いPH診断領域での有用性も報告され2),シンチグラフィの有用性が軽視されるようになり,その施行自体ができない医療機関も増えつつある。しかし,ガイドラインにも示される通り,いまだに肺血流シンチグラフィはこの領域の鑑別診断のゴールドスタンダードである。
本稿では,PHの鑑別診断における肺血流シンチグラフィの有用性と限界,考えられる有効な利用法に関して概説する。
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