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基礎医学Up-To-Date

強皮症モデルマウス(Fra-1過剰発現)の肺高血圧症

安岡秀剛

Pulmonary Hypertension Update Vol.5 No.1, 46-49, 2019

全身性硬化症(systemic sclerosis:SSc,強皮症)は皮膚および全身の諸臓器の線維化,微小血管障害,自己抗体産生の3つの特徴を有する膠原病である。これまでさまざまな研究が行われ,SScの病態についての理解が進んできているものの,疾患の進行を制御できる適切な治療がなく,重要臓器に障害が及ぶと生命予後は不良で,悪性腫瘍にも匹敵する。特に臓器合併症のうち肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH),間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)はSScの主要な死因である1)とともに予後規定因子であり2),これらに対する新規治療の開発は急務の課題である。
疾患モデル動物はさまざまな疾患でその病態の解析や治療法の開発に重要な役割を果たし,SScにおいても例外ではない。しかし,SScにおいて実際のSSc患者と同様,先に挙げた3つの特徴をもつモデル動物は稀である3)。また臓器病変でみてもPAHとILDを同時に呈したモデル動物は少なく,新規治療法開発の遅れの要因の1つとなっている3)。過去に報告された転写因子AP-1を構成するFra-1を高発現するトランスジェニック(TG)マウスが肺間質の線維化をきたすことが報告された4)。転写因子AP-1はFos,Jun,ATF(activating transcription factor),MAF(musculoaponeurotic fibrosarcoma protein)ファミリー蛋白により構成されるホモないしはヘテロの二量体で,細胞増殖や分化に影響する多様な遺伝子発現に寄与する転写因子である5)ことから,SScの病態に寄与する可能性が考えられる。われわれは本マウスが肺血管系の異常をきたし,さらに皮膚硬化も伴うことを見出した。そこでFra-1 TGマウスがPAH/ILD同時モデル動物としてSSc研究に応用できる可能性についてさらに検討した6)。この結果について本稿で概説する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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