Theme 肺高血圧症の境界域―各群における鑑別・診断の難しさ― State of the Art
第1群と第3群の境界域鑑別
Pulmonary Hypertension Update Vol.4 No.1, 18-25, 2018
現在,第3群の管理指針では「肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療ガイドラインに従った治療を行うことを推奨するデータがない」とされている。しかし実臨床において,第1群PAHに軽度の肺実質障害を合併した症例では,選択的肺血管拡張薬の効果が期待されている。だが両群の境界域を鑑別する方法はいまだ確立されていない。境界域の鑑別にはまず,第1群および第3群の病態を知る必要がある。つまり第1群が肺の脈管障害に誘起されたPAHであるのに対して,第3群は肺の実質障害による肺高血圧症(PH)である。両者ではその病態の進展過程が明らかに異なる。さらには第3群でも,慢性閉塞性肺疾患(COPD)と特発性肺線維症(IPF)に関連するPHでは明らかにその病態が異なる。あくまでも私見になるが,境界域の鑑別には低酸素性肺血管攣縮(HPV)と肺拡散能力(DLCO)の評価が鍵になると考えている。HPVの関与が比較的軽度である症例,さらに呼吸機能の程度に比しDLCOの低下が著しい症例は,第1群により近い病態を有する可能性がある。しかし具体的なバイオマーカーや呼吸機能検査の数値設定など,今後さらに検討する必要がある。
「KEY WORDS」肺動脈性肺高血圧症(PAH),肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧症,慢性閉塞性肺疾患(COPD)関連肺高血圧症,特発性肺線維症(IPF)関連肺高血圧症
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