全身性強皮症(SSc)に伴う肺動脈性肺高血圧症(PAH)は多くの肺血管拡張薬が登場した近年においても生命予後は十分に改善したとはいえない。SScに伴うPAH(SSc-PAH)は早期診断が予後改善には重要で,速やかな肺血管拡張薬の併用療法(initial combination therapy)が明らかに有効である。しかし,SSc-PAHには高頻度に間質性肺炎(ILD)や潜在性の左心拡張障害,肺静脈閉塞症(PVOD)など他の心肺病変が並存していることが多い。ILDに伴う肺高血圧症(PH)(ILD-PH)に対する肺血管拡張薬の有用性は証明されていない。また,左心疾患やPVODではかえって病態の増悪をきたしうる。SSc-PAHの治療反応が必ずしも良好でない原因の1つとしてこれら複合病態の存在が考えられる。
左心疾患に伴うPH(第2群),ILD-PH(第3群)も決して少なくない。これらのPHに対する治療法は十分に確立しているといえず,PAHと同様に生命予後は極めて不良である。本稿ではSScに伴うPHに対する治療戦略,その鑑別に欠かせない病態診断の難しさ・問題点を論じてみたい。
「KEY WORDS」強皮症,肺高血圧症,左心不全