甲状腺結節性病変は触診,画像検査,細胞診検査などの手法で適確な術前診断,治療がなされるようになった。乳頭癌は細胞診により術前組織診断が可能であるが,濾胞癌は依然として術前診断が難しい。未分化癌を除いた甲状腺癌は比較的予後が良好で,小さな被包型乳頭癌は経過観察になる場合も多い。近年分化型癌では過剰診断,過剰治療が問題になっているが,被包性濾胞型乳頭癌や濾胞癌,NIFTP(non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features)の診断についてはさまざまな問題があり,鑑別の難しさを加藤1),覚道ら2)が本誌で述べた。覚道らは腫瘍診断のフローチャートを示した2)。乳頭癌や濾胞癌の診断基準は比較的はっきりしていて,診断は容易のようにみえるが,実際の病理診断では組織像をどのようにとらえるか意外に難しい。実際の診断に際して病理医が何を悩んでいるのかを若干解説する。