甲状腺癌はしばしば反回神経に浸潤し声帯麻痺をきたす。術前に声帯麻痺がない症例でも術中に反回神経が甲状腺癌による浸潤を受けていることが判明する場合もある。Nishidaらは,このような症例では,できるだけ反回神経の剥離温存に努めることによって,癌の再発リスクを増やすことなく声帯運動を温存できることを報告している1)。また,Kiharaらは,反回神経が腫瘍からの剥離によって,元の太さより1/2以下まで細くなっても温存(反回神経部分層切除)された18症例中,約80%の症例で神経機能が回復したことを報告した2)。一方,やむなく合併切除を余儀なくされる症例もあり,その判断は重要である。当院では,神経モニタリング導入以前から,術前喉頭鏡で完全声帯麻痺であれば,発声機能の回復を期待して神経合併切除再建を施行し,術前に声帯運動が認められる場合には,なるべく神経を剥離温存して声帯運動の温存を図ってきた。今回われわれは,反回神経に対する術中処置を行うにあたり,術中神経モニタリングが有用な情報を提供し得えるかどうか検討したので報告する。
甲状腺癌Topics
第28回日本内分泌外科学会総会
術中神経モニタリングにおける電気的反応と甲状腺癌による反回神経浸潤程度との関連性
掲載誌
Thyroid Cancer Explore
Vol.3 No.1 69-72,
2017
著者名
舛岡裕雄
/
宮内 昭
/
宮章博
記事体裁
抄録
疾患領域
甲状腺・副甲状腺
診療科目
糖尿病・代謝・内分泌科
媒体
Thyroid Cancer Explore
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。