レンバチニブは血管新生,増殖に関与する複数のreceptor tyrosine kinaseを阻害し,放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺癌に治療効果を発揮するtyrosine kinase inhibitor(TKI)である1)。血管新生抑制による腫瘍出血リスクが高く,脳転移例においては慎重な対応が必要である。甲状腺分化癌の脳転移は全患者の1%,他の遠隔転移を有する患者の4.5~18%に認められ,稀であるものの予後不良因子である2)。脳転移については手術や定位放射線治療などにて生命予後改善が期待できる3)4)が,他臓器への転移も有している可能性も高いことから全身の病変制御を目的としてのTKIは考慮されるが,脳転移などの低頻度の転移に関するエビデンスは不十分である。われわれは脳転移,骨転移に対する局所治療を先行実施した後にレンバチニブを導入し,各臓器の病変における良好な成績を得た症例を経験した。本例を通じて,導入時期や手順などへ慎重な判断が求められる脳転移例へのTKIの適応を議論したい。