State of the Art(Thyroid Cancer Explore)
【基礎】甲状腺癌の素因となる一塩基多型:ゲノムワイド関連解析から得られた主な知見
Thyroid Cancer Explore Vol.3 No.1, 25-31, 2017
疫学研究で示されているように,甲状腺癌はヒトの悪性腫瘍の中で遺伝的影響が非常に高く,遺伝子研究を行う意義は大きい。本稿では,非家族性分化型甲状腺癌(DTC)の発症に影響を及ぼす遺伝子変異,特に共通の一塩基多型(SNPs)のゲノムワイド関連解析研究(GWAS)で得られた知見について述べる。
今日まで6件のGWASが行われており,ある種のSNPsとの関連性が,日本を含むさまざまな民族における研究で確認されている。最も強力なSNPsの累積効果によって甲状腺癌の発症リスクが徐々に上昇することが示されているが,DTCの総合的な予測能力は極めて限られている。したがって,共通するSNPのジェノタイピングを行うだけでは,現状の臨床でエビデンスに基づくカウンセリングを行うには不十分であろう。さらにNon-SNP遺伝子多型やエピジェネティックな情報を含める研究を実施し,新しい方向性と生物学的ネットワークを指向した計算アルゴリズムを開発する必要がある。
「KEY WORDS」非家族性分化型甲状腺癌,一塩基多型,ゲノムワイド関連解析,疾病リスク,遺伝性
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