Essential Pathology
好酸性濾胞性腫瘍の細胞診
Thyroid Cancer Explore Vol.3 No.1, 11-14, 2017
甲状腺濾胞性腫瘍の中で,好酸性細胞が腫瘍の大部分(75%)を占める亜型を好酸性濾胞性腫瘍と呼び,さらに腺腫と癌に分類される。好酸性細胞は腺腫様甲状腺腫でも稀ならず出現する。好酸性細胞で構成される腺腫様甲状腺腫,濾胞腺腫,濾胞癌の組織学的鑑別は通常のタイプのものと同様の方法でなされる。本稿では,穿刺吸引細胞診において好酸性濾胞性病変が疑われた場合に推定診断を行うプロセスにつき概説する。
そもそも,細胞診のうち濾胞性病変は最も正診率が低く,観察者間の意見の相違の大きい分野である。甲状腺癌取扱い規約第7版では,“細胞学的所見のみから濾胞癌と濾胞腺腫を区別することは困難”であると記載されている1)。しかし,伊藤病院では細胞診で濾胞性腫瘍を疑った場合に採取された細胞量,細胞重積,細胞異型からfavor benign,borderline,favor malignantの3カテゴリーに亜分類2)3)し,その後の治療の判断材料の1つとしている。この方式は日本甲状腺学会で作成した甲状腺結節取扱い診療ガイドライン4)でも採用されている。一方,好酸性濾胞性腫瘍では通常のタイプと比べ濾胞構造をとることが少なく,核が濃染傾向にあり,良性病変であっても少なからず核異型が認められるといった組織学的特徴があるため,通常の濾胞性腫瘍とは異なる細胞診断の基準が必要となる。こうした内容を記載した書籍は少ないと思われるため,本稿ではわれわれが日常行っている診断手順を紹介してみたい。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。