誌上ディベート
甲状腺癌の発癌機序 両論文に対するコメント
Thyroid Cancer Explore Vol.2 No.1, 49, 2016
発癌のメカニズムは従来,「古典的多段階発癌説」によって説明されてきた。すなわち,正常細胞より変異が段階的に蓄積し,良性腫瘍から悪性の癌に変化するというものである。しかしながら,近年「成人幹細胞(adult stem cell)」,「癌幹細胞(cancer stem cell)」,「残存胎児性細胞(fetal cell)」,「前駆細胞(progenitor cell)」という概念の登場とともに,これらの細胞が癌の発生母地である可能性が提唱されてきた。光武範吏氏によれば,現在の「多段階発癌説」は正常成人細胞のみならずこれらの幹細胞も発生母地として含めて唱えられているという説明である。ただし,幹細胞が発生母地となる場合でも,多段階発癌説では変異の蓄積によって進行・悪性化することを発癌の機序とする。
本企画は問題点をクローズアップすることを目的としており,テーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論であり,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。
・芽細胞発癌説の立場から/髙野徹
・多段階発癌説の立場から/光武範吏
・両論文に対するコメント/赤水尚史
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。