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Essential Pathology

甲状腺乳頭癌の過剰診断の問題─被包性濾胞型亜型とNIFT─

加藤良平

Thyroid Cancer Explore Vol.2 No.1, 9-12, 2016

「はじめに」近年,北米を中心に甲状腺癌が増加しつつある1)-3)。この原因として「診断技術の向上」と「病理診断」による増加が考えられるが,特に後者は,濾胞型乳頭癌の診断の増加によるものであろう。実際,濾胞型乳頭癌の頻度が通常型乳頭癌よりも多くなっているというから驚きだ。この濾胞型乳頭癌(特に被包性濾胞型乳頭癌)の診断には診断者間の差(interobserver variation)が大きいので,過剰診断(overdiagnosis),過剰治療(overtreatment)の可能性が指摘されている4)。一方,本邦では濾胞型乳頭癌の増加は今までのところ問題視されてこなかったが,その組織診断に苦慮することが多いのも事実である。実際,筆者の元に寄せられる甲状腺結節のコンサルテーションでは,被包性濾胞型乳頭癌か濾胞腺腫かの鑑別が問題となる例が多い。本稿では甲状腺腫瘍の病理診断学において最も難しいテーマと思われる「濾胞型乳頭癌の組織診断」と現実的な診断のアルゴリズムの確立に焦点を当てて解説することにする。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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