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Evidence Explanation

時間経過に伴う統合失調症スペクトラム障害の臨床的・社会的・個人的回復:状態と年次遷移

渡辺範雄

精神科臨床 Legato Vol.7 No.3, 44-46, 2021

統合失調症患者の回復は,臨床的・社会的・個人的回復を含む複雑なプロセスであり,個々人や時代背景などによって大きく異なります。精神科領域では,これまで臨床症状を最小限に抑えることを目的とした臨床的回復に焦点があてられてきました。既存の研究は臨床的・社会的・個人的回復の各領域を個別に検討するものであり,それぞれの回復過程をまとめて解析し,各領域の相互関係や時系列での遷移を検討するような研究はありませんでした。
また,従来のデータ分析に用いられる統計モデルでは回復データがサブドメインの二項変数に還元され,全体的機能はトータルスコアによって表現されます。これらの方法では「どの回復領域が患者にとって最も困難であるか」といった情報が失われてしまいます。
これらの概念的・方法論的課題を解決するため,Castelein Sらは統合失調症患者の大規模な追跡調査コホートのデータを利用し,臨床的・社会的・個人的回復について異なる評価指標を用いてその回復状態の違いを混合潜在マルコフモデル(MLMM)で再現し,状態間の遷移確率を検討しました1)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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