ホフマン(1776~1822)が1819年に発表した『牡猫ムルの人生観』1)は,人間の言葉を理解する猫ムルの回想録という形をとった作品で,夏目漱石が『吾輩は猫である』を書く際に参照した作品としても知られているが,ムルの回想録には,楽長クライスラーの自伝も混在するという複雑な構成の作品である。しかし,クライスラーの自伝部分には,PTSDを思わせる公女や知的障害を思わせる公子のほか,クライスラーの病的側面や彼と似ている画家レオンハルトの狂気などが描かれているため,精神医学的にも興味深い内容になっている。
Culture in Psychiatry
ホフマンの『牡猫ムルの人生観』
掲載誌
精神科臨床 Legato
Vol.7 No.2 54-55,
2021
著者名
高橋正雄
記事体裁
連載
/
コラム
/
抄録
疾患領域
精神疾患
診療科目
心療内科
/
精神科
媒体
精神科臨床 Legato
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。