主要な精神疾患(統合失調症,大うつ病性障害[MDD],双極性障害)は公衆衛生上の重要な課題であり,世界の疾病負担の14%を占めるともいわれています。精神疾患の治療および再発・再燃の予防においては長期間にわたって服薬を継続し,良好な服薬アドヒアランスを得ることが重要となりますが,向精神薬の服薬アドヒアランスは残念ながら良好とはいえません。実際,精神疾患を有する患者さんは自身の疾患や治療についての理解が不十分となり,服薬の継続が困難となる可能性が高いとされています1)
向精神薬のノンアドヒアランスは,疾患の悪化や治療効果の低下,その後の転帰不良,再入院,QOLおよび精神社会的アウトカムの低下,症状の再発,併存疾患の増加,医療資源の浪費,自殺の増加などに繋がります1-5)。患者と医療従事者が合意する治療目標の達成を目指し,適切な介入を行うためには,ノンアドヒアランスの頻度やその関連因子を把握することはきわめて重要です。しかし,向精神薬のノンアドヒアランスに関するエビデンスは十分ではありませんでした。
本稿で紹介するのは,主要な精神疾患(統合失調症,MDD,双極性障害)における向精神薬のノンアドヒアランスについて既存の一次研究の結果をまとめ,その頻度と関連因子を明らかにしたシステマティックレビューとメタ解析です6)