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Psychiatric Lecture

病態 うつ病と認知症の共通病態としての神経炎症

溝口義人

精神科臨床 Legato Vol.6 No.3, 24-28, 2020

アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease;AD)は2030年に世界の患者数が7,000万人を超え,そのグローバルコストは2兆ドルに及び,がんや糖尿病によるコストをはるかに上回ると推計されている1)。ADでは認知機能が低下しはじめる少なくとも15年前に老人斑(amyloid-β plaques)が出現するとされ,老人斑の主成分であるアミロイドβ(amyloid- β;Aβ)の凝集を早期に発見し,かつAβの凝集を防ぐことが根本的治療法(disease-modifying therapy)と考えられている1)
うつ病はAD発症のリスクファクターであると以前から報告されている2)。しかし,近年のamyloid positron emission tomography(PET)imagingを用いた研究では,地域在住の健常高齢者において,大脳皮質にAβが沈着している人ほど孤独感や寂しさを強く感じており3),その後の経過においても抑うつ症状がより増悪すると報告された4)。またうつ病に伴いやすい睡眠障害についても,健常高齢者において,睡眠の自己評価が低い人ほど大脳皮質にAβが沈着していると報告された5)6)。これらの報告は,抑うつ,不安あるいは睡眠障害が脳へのAβ負荷の増大を反映しており,AD発症の前駆期を早期診断する臨床的マーカーとなりうる可能性を示唆している。
「KEY WORDS」うつ病,アルツハイマー型認知症(AD),神経炎症,ミクログリア,BDNF

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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