Psychiatric Lecture
病態 統合失調症における神経認知・社会認知の障害の病態生理
精神科臨床 Legato Vol.6 No.2, 22-26, 2020
統合失調症は一般人口の約1%が罹患する原因不明の精神疾患であり,幻覚や妄想などの陽性症状,感情の平板化や意欲低下などの陰性症状に加え,認知機能障害(cognitive impairment in schizophrenia;CIS)がみられる1)。CISは,全般的知能レベルとは独立した特異的な認知機能領域の障害で2),患者の一生を通じて存在し,統合失調症の生物学的マーカーの候補と考えられる3)。
従来,CISは処理速度,言語・視覚学習,ワーキングメモリ,注意/覚醒,推論/問題解決といった(神経)認知機能の障害を指すものであったが,近年,社会認知機能の障害が注目されている(表1)4)。社会認知機能は「他者の意図や性質を受け止める人間としての能力を含む,社会的交流の根底にある精神機能」ないし「多様でフレキシブルな社会的行動を支える高次の認知過程」と定義される5)。社会認知機能の改善は患者の社会復帰に直結するのに対して,神経認知機能の改善は社会認知機能の介在を経て,間接的に社会復帰に影響を及ぼすとされている6)7)。そのため,患者の社会的転帰を考えるうえで,社会認知機能は重要である(図1)。
本稿では,統合失調症の神経認知と社会認知の障害の病態生理を,脳形態,機能局在,機能的結合,神経代謝,神経伝達に注目して概説する。
「KEY WORDS」統合失調症,神経認知,社会認知,社会的機能,病態生理学
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