2018年11月14日~16日に第28回日本臨床精神神経薬理学会と第48回日本神経精神薬理学会の合同年会が東京ドームホテルで開催されました。今回は第28回日本臨床精神神経薬理学会の事務局長を務めさせていただいた立場から,本合同年会の報告をさせていただきたいと思います。
昨今,向精神薬開発をとりまく国内外の環境は,一時に比べると大分厳しい状況となっており,今こそ基礎と臨床が力を合わせてこの難局を乗り切る礎を作りたいという両会長の思いにより,2014年以来の合同開催という形に至りました。大会のテーマは「精神神経薬理学のイノベーション創出」といたしました。このテーマにはもちろん新薬の開発促進や新規性の高い研究知見への願いが込められていましたが,たとえば臨床面では既存の薬剤の新たなる効能の確認,さらには有害事象の最小化,そして何よりも個別化を図ることで,1人でも多くの当事者をリカバリーに導くストラテジーの確立も立派なイノベーションの創出ではないでしょうか。また,私は基礎の分野は門外漢ですので中込和幸会長のお言葉を拝借しますと,新たな動物モデルの作成や再生医療などの科学技術を生かした薬物の開発を進めると同時に,臨床分野においては当事者の望む治療目標に合わせたアウトカムメジャーの開発やレギュラトリーサイエンスの推進が期待され,両者がタッグを組むことではじめてプレシジョンメディシンの実現につながることが期待されるのではないでしょうか。