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Psychiatric Lecture

疫学 全国規模の診療報酬明細書データベースに基づくがん患者への精神科系薬剤の処方実態の研究

川上浩司佐藤泉美

精神科臨床 Legato Vol.5 No.1, 12-17, 2019

―本研究の背景を教えてください。
わが国で新規にがんと診断される患者は年間100万人を超え,その30~50%にうつ病や不安,不眠,適応障害などの精神疾患が併存しているといわれています1)-4)。がん患者の精神疾患の併発は,QOLや治療意欲,生存率の低下など負の影響を及ぼすことがわかっていますが5)-8),精神疾患は医療者側,患者側のさまざまな理由による見逃しや過小評価,適切な治療がされていないこともしばしば指摘されています9)。精神疾患の専門家ではないがん専門医は,患者の精神的な問題を「一過性のものだろう」,「性格によるものだろう」と捉えて見逃しや過小評価をしてしまうことがあり,患者側も,「がんになったのだから気持ちが落ち込むのは仕方がない」と考えて治療が必要であるかもしれない症状として自覚しない,あるいは精神疾患へのマイナスイメージから恥じて表出しないことが少なくありません。
海外では,1980年代に,米国大統領夫人のナンシー・レーガン氏が乳がんを公表したことが契機となり,がん患者とその家族の心理・社会・行動的側面について研究と実践を行う「サイコオンコロジー(精神腫瘍学)」が確立され,チーム医療のもとに発展してきました。一方わが国では,現在もチーム医療の実践は限定的であり,がん患者の精神疾患の問題への取り組みは発展段階といえるでしょう。2002年より厚生労働省が各都道府県にがん診療拠点病院を指定しており,精神的苦痛のケアを含む緩和ケア提供体制の整備が指定要件となっています。そのため,以前に比べてがん患者の精神疾患の問題への取り組みは充実してきていると考えられますが,一般病院も含めた治療の実態の現状は未知であり,これらを明らかにすることに関心をもちました。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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