「ヤスパースという人物についてご紹介ください。」
カール・ヤスパースは1883年にドイツのオルデンブルクに生まれました。彼の経歴の中で精神科医として臨床に携わった期間は限られたものでしたが,医師国家試験合格からわずか5年後の1913年に『Allgemeine Psychopathologie』を書き上げました。このあと間もなく精神医学から心理学を経て哲学へと転向していき,哲学者としても多くの著作を発表し,サルトルやハイデガーと並ぶ20世紀を代表する哲学者となります。妻がユダヤ人だった彼は,ナチス政権下で大学の職を追われ,出版も禁止されてしまうなかでも,本書の改訂を続けます。これまで第9版まで版を重ねています。第4版の改訂以降第9版までは内容上の変更はありません。実質最終版となった第4版の序文には1942年に原稿ができあがっていたことが記されていますが,出版は第二次世界大戦終了後の1946年となりました。