Catch Up 分子生物学
新たな治療標的としてのエピゲノム
大腸がんperspective Vol.4 No.4, 62-66, 2020
エピゲノム機構は,DNA配列の変化を伴わずにクロマチン構造の変化により遺伝子発現を精密に制御する機構であり,細胞の発生・分化・老化・リプログラミングなど多彩な生物学的現象にかかわっている。特に癌においてDNAメチル化やヒストン修飾によるエピジェネティックな遺伝子制御機構を解析することで,発癌機構解明や新しい診断法,バイオマーカーへの応用,治療法の開発など,さまざまな知見が報告されてきている。エピゲノムを介した治療の目標はエピジェネティック異常により脱制御された遺伝子機能を正常状態に戻すことであり,現在は血液腫瘍に対する治療薬を中心に承認されており,今後固形癌への適応拡大が期待される。治療ターゲット因子もDNAメチル化だけでなくクロマチン修飾因子へと拡大しており,また宿主免疫との機能的相互作用といった新たな側面も注目されてきている。
「KEY WORDS」エピゲノム,大腸癌,DNAメチル化,ヒストン修飾,鋸歯状病変
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。