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画像診断との対比で学ぶ大腸疾患アトラス

消化管生検診断の落とし穴と工夫(食道・胃・大腸,症例検討)

栃尾智正寺本彰平田大善岩館峰雄佐野寧

大腸がんperspective Vol.4 No.4, 4-11, 2020

本誌は最終号であり,本誌監修 杉原健一先生らの推薦で始まった『画像診断との対比で学ぶ 大腸疾患アトラス』も今回で最終稿となる。長い間,色々な先生方にご協力いただき,既に『大腸腫瘍病理組織図譜(2016年)』のなかに前号までの掲載内容はまとめてある。
今回最終稿として取り上げたのは,「消化管生検診断の落とし穴と工夫」である。執筆者は,佐野 寧先生のグループである。佐野先生は新しい試みとして2つのことを行っている。若い先生方を対象にした教育セミナーと検診の薦めである。教育セミナーの一つがあとがきに書かれている「神戸舞子スキルアップアカデミー」であり,若い先生方が夜遅くまで熱心に討論している。その内容の一部が今回のテーマである。そのなかでも頻度の高い質疑応答を筆者がコラムとしてまとめた。
もう1つは彼らが行っている検診の薦めで、平たくいえばねずみ講(network marketing, Ponzi Scheme)である。名前がよくなく怪しい商売のように受け取られるかもしれない。以前,本稿に症例を提示いただいた藤井隆広先生と工藤進英先生,吉田茂昭先生らで行っている関東Ⅱc研究会の講演で,佐野先生自身が自嘲的と思えるジョークとして,「ねずみ講」と言っていたので批判されないであろう。彼らが行っているのはnetwork health checking(NHC)である。検診を受ける重要性を患者さん同士で薦め合う,簡単には癌の発見と治療が終了後,その患者さんと主治医が話し合い,早期発見,早期治療の重要性を理解していただき,検診カードを渡し友人に薦めてもらうことである。その方が行く医療機関は本人の選択である。NHCが良いかどうかは読者の判断であるが,彼らの施設では確実に早期発見治療例が増加している。良い結果が前提にあるからその患者さんも検診の重要性を友人に知らせることができる。本稿で一病院のことを書くことは公の精神とは異なるというご批判もあると思う。しかし,本稿の本来の目的が良い診断と治療のための稿であることを考えると,NHCの普及は患者さんの幸せに通じるであろう。既に,始めている方は更に前進し,まだ始めていない方は是非これから進めて欲しいと思う。そのなかで病理診断精度の重要性がご理解願えれば幸いである。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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