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Catch Up 分子生物学

大腸癌と炎症性サイトカイン

松野裕旨西村潤一高橋秀和原口直紹畑泰司松田宙水島恒和土岐祐一郎森正樹

大腸がんperspective Vol.4 No.1, 54-58, 2018

炎症は,発癌や癌の増殖,浸潤,転移など,腫瘍発育のさまざまなStageで重要な役割を担っている。慢性炎症は大腸癌発生のリスク因子としてよく知られており,炎症反応はサイトカインが中心的役割を果たしている。TNFは癌細胞のNF-κB経路を活性化,IL-6は癌細胞のSTAT3経路を活性化させ,発癌や癌細胞の増殖に作用している。しかし,TNFやIL-6を標的とした臨床試験では,病変のコントロールにほとんど効果を示さなかった。腫瘍環境では生化学的に重複した機能をもつサイトカインが豊富に存在しているためと考えられた。そのため,いくつかのサイトカインを標的とする薬剤を組み合わせた治療であれば,効果を発揮する可能性があると考えられている。複雑なサイトカインネットワークの把握が進めば,効果的な治療開発につながるため,さらなる研究の発展が期待される。
「KEY WORDS」TNF,IL-6,NF-κB,STAT3,サイトカインネットワーク

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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