「Summary」本邦では側方郭清による拡大手術が標準治療とされてきた。一方,欧米では,術前化学放射線療法(CRT)を用いた集学的治療を標準治療とし,側方郭清は原則として行わない。欧米と本邦の治療成績を比較することは困難であるが,少なくとも欧米の臨床試験では,本邦と同等の良好な成績が報告されている。近年,本邦でも術前CRTを取り入れる施設が増えているが,側方郭清の位置づけに関して明確な結論は得られていない。近年,日本および韓国からRetrospectiveな研究結果が複数報告されており,術前CRT後も病理学的側方転移陽性症例が一定数存在すること,側方リンパ節の腫大を認める症例では術後の側方領域の局所再発が多いこと,側方リンパ節腫大を認めない症例では,術前CRTを行った上で側方郭清を省略しても,良好な治療成績が得られること,などが明らかにされた。本稿では,術前CRTと側方郭清の位置づけに関して,過去の報告と本邦での現状,今後の課題を解説する。
「Key words」直腸癌,化学放射線療法(CRT),放射線療法(RT),集学的治療,側方郭清