17歳 男性(70kg)
主訴:左大腿部筋肉内出血.
既往歴:特記すべき事項なし.
家族歴:特記すべき事項なし.
現病歴:乳児期に中等症血友病Aと診断され,14歳から血液凝固第VIII因子製剤(FVIII)2,000単位,週3回の定期補充療法を行いながら部活動で野球を行っていた.ある日階段で踏み外して転倒.左大腿部を強打し,コンパートメント症候群を発症するほどの筋肉内出血を認めた.近医にてFVIIIの補充と緊急減張切開にて治療し,歩行可能な状態まで回復した.しかし,リハビリテーションにて負荷増大したところ,同部位の再腫脹を認め,再びコンパートメント症候群となった.初回と同様の治療を行うも患部の止血が得られず,精査の結果,インヒビター発現を認めていた.低力価であったためFVIII大量補充による中和療法を試みたものの無効で,バイパス療法に変更した.活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)86IU/kgを12時間ごとに投与するも良好な止血効果が得られず,遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤(rFVIIa)87μg/kgを2時間ごと投与に変更することで止血が得られた.しかしその後も創部の状態は安定せず,1日3,000mLの出血を認めることもあった.閉創術直前にrFVIIa 285μg/kg投与するも止血が十分に得られず,止血コントロール不良と判断され本院へ紹介転院された.