心不全患者には心房細動が多く合併する。左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者を対象にアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)とエナラプリルの効果を比較したPARADIGM-HF試験では,約37%の患者に心房細動が合併していた。一方,左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者を対象にARNIとバルサルタンの効果を比較したPARAGON-HF試験では,約32%の患者に心房細動が合併していた。ARNIは心不全患者の心臓突然死予防効果を有する。ARNIと心房細動についての興味は,心不全患者においてARNIの有効性(心血管死および心不全入院の減少)は心房細動合併例と非合併例で同様か,そして心不全患者においてARNIは新規心房細動発症を抑制するか,の2点であろう。結論からいうと,HFrEF患者におけるARNIの有効性は心房細動合併の有無に関わらず認められる。一方,心不全患者におけるARNIの新規心房細動発症抑制効果に関する十分なエビデンスはない。ARNIのリバースリモデリング効果は,低心機能患者の心房細動アブレーションの適応を拡げる可能性がある。
THEME 心不全診療の進歩と心房細動 Special Articles
心房細動とARNI
掲載誌
Cardio-Coagulation
Vol.9 No.2 23-27,
2022
著者名
髙橋 尚彦
記事体裁
抄録
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特集
疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
媒体
Cardio-Coagulation
Key Words
ネプリライシン阻害,ナトリウム利尿ペプチド,リバースリモデリング,心房細動アブレーション
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。