<< 一覧に戻る

THEME COVID-19ワクチンと血栓症 Special Articles

COVID-19ワクチンによるTTSの推定発症機序

射場敏明

Cardio-Coagulation Vol.9 No.1, 22-27, 2022

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは,変異型の出現によって新たなステージを迎えようとしている。しかし,ウイルス増殖抑制薬や抗体カクテル療法とともに,ワクチンによる感染予防が対策の柱であることには変わりがない。これまでの主力ワクチンとしてはアデノウイルスベクターワクチンとメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの2種類があるが,このうちアデノウイルスベクターワクチンについては,thrombosis with thrombocytopenia syndrome(TTS)と呼ばれる血小板減少症を伴う血栓症がごく稀ながらみられることが知られている。
TTSは,頻度が低いとはいえ,ひとたび発症すると致死率が高く,また健常人における有害事象であるがゆえに大いに注目された。この特異な有害事象について正確な知識を得ておくことはワクチンを普及させていくために必要であり,その病態理解は今後安全なワクチンを開発していくためにも重要であることから,多くの研究者が病態解明に向けた努力を続けてきた。その結果,発症メカニズムについてはヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と同様の抗血小板第4因子抗体産生が根本的な原因であることが短期間で明らかにされ,対策についても免疫グロブリン静注療法が有効であることが知られるようになった。本稿では,特にアデノウイルスベクターワクチン接種後のTTSの発生機序に焦点を絞って,その解説を行う。
「KEY WORDS」新型コロナウイルス感染症(COVID-19),血小板減少症を伴う血栓症(TTS),血小板,アデノウイルスベクターワクチン,スパイク蛋白

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る