昨今,いわゆるビッグデータを用いた研究が隆盛を極めている。医療系のビッグデータとしてはレセプトデータ,DPCデータなどさまざまなものがあるが,われわれはそのなかで2017年度からレセプトデータを用いて心房細動のリスク因子包括的評価プロジェクト(F-CREATE project)を開始した。そこで,“CHA₂DS₂-VAScスコアと虚血性脳卒中および出血イベントとの関係の検討” “女性という性は心房細動患者において脳梗塞のリスクを高めるかの検討” “心房細動に併存した腎疾患は虚血性脳卒中および出血イベントのリスクになりうるかの検討” “抗凝固薬使用下の心房細動患者における虚血性脳卒中発症のリスク因子の探索とその寄与危険割合の算出”などといった臨床上にある“問い”に対して日本発のリアルワールドデータを使用してエビデンスを創生してきた。

本稿では,これら一連の研究を概観しながらビッグデータを用いた臨床研究の実状を解説するとともに,その課題と将来的な展望についても概説する。