消化管出血の代表として消化性潰瘍出血と大腸憩室出血を取り上げ,その既往がある症例に対して抗血小板・抗凝固療法を行う際の対応について概説した。消化性潰瘍出血の既往がある症例に対して低用量アスピリン(LDA)を投与する場合は,再発予防としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与が強く推奨され,必須であるともいえる。他の抗血小板薬や抗凝固薬を投与する場合も,PPIの投与が望ましいと考えられる。一方,大腸憩室出血は原因不明で再発が多く,有効な治療薬もない。いまだ十分なエビデンスはないが,血栓症リスクの高い症例では抗血小板薬や抗凝固薬の投与が優先されると考えられる。抗血小板薬や抗凝固薬は血栓症リスクを抑制するが,消化管出血などの出血リスクを上昇させる。特に消化管出血の既往があればさらに高くなる。したがって,抗血小板・抗凝固療法を行う際にはそのメリットとデメリットのバランスを考えることが大切である。
「KEY WORDS」消化管出血,消化性潰瘍出血,大腸憩室出血,抗血小板療法,抗凝固療法