肺血栓塞栓症(PTE)と深部静脈血栓症(DVT)は,静脈血栓塞栓症(VTE)と総称される。VTEはかつて稀な疾患とされていたが,近年では大規模災害時の発症や多くの診療科における院内合併症として広く知られるようになった。このことから予防管理が行われるようになってきたが,現在もなお死亡に至る重症例も存在する。しかし,適切に診断,治療を行えばその予後は比較的よいことから,迅速かつ適切な対応が重要となる。
『肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン』(以下,VTEガイドライン)の初版は2004年4月に発表され,2009年に第1回の改訂が行われた。以降,抗凝固療法の中心であったヘパリン,ワルファリンに加え,直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が臨床適応となり,VTEの予防,治療は大きな変化を遂げている。
今回の2回目となる改訂においては,抗凝固療法に対して使用可能な中心的薬剤の1つとしてDOACを推奨し,具体的な使用法について記載されたこと,急性PTEに対する血栓溶解療法の適応が限定されたこと,下大静脈フィルターの適応の変化やフィルター回収の重要性について加筆されたことなどが主な改訂点として挙げられる1)
本稿では,VTEガイドラインの主な改訂点について記載する。なお,誌面の都合によりVTEに対する外科的治療については割愛させていただく。