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癌患者におけるVTE

Cardio-Coagulation Vol.5 No.2, 43-47, 2018

わが国においては静脈血栓塞栓症(VTE)の発症は比較的少ないとされ,周術期の予防に関してはある程度普及しているが,その他の領域の予防はいまだ十分には確立していない。VTE発症後の治療に,近年多数の新規の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が開発・発売された。治療は改善し,再発の心配をしないでよいかと思われたが,意外と一定期間の治療を行っても再度VTEを発症する,あるいは血栓後症候群(post thrombotic syndrome:PTS)などの後遺障害を併発することを経験する。特に誘因のないVTE(unprovoked VTE)が多く,さらに癌患者に合併したVTE(cancer-associated thrombosis:CAT)はVTE治療における再発率が高い。なぜ,そうなのか,Varkiらは凝固系亢進のメカニズムを図示して説明しているが1),そのなかにはt-PAやPAI-1など,その作用が十分に解明されていないものも含まれており,推察の域を出ない部分もあると思われる。癌に伴う血栓症は治療終了後に再発しやすいだけでなく,抗凝固薬による治療を行っていてもVTEの再発イベントを認める,あるいは抗凝固療法中にVTE以外の血栓症,たとえば脳血栓症や脳梗塞,その他の重要臓器の梗塞症状などが併せてみられることがある。2018年3月に,日本循環器学会のVTEに関連するガイドラインが改訂された2)。癌に関する記述は少ないが,前回に比べて投与期間の延長にも踏み込んでおり,一歩前進したと考えられる。
本稿では,CATの疫学と特徴,治療における注意点を解説する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

抄録