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免疫チェックポイント阻害薬治療時代の新しいエンドポイント~生存曲線下面積RMST(restricted mean survival time)について
がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 126-128, 2022
がん薬物療法においては,化学療法,分子標的薬治療のあと免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に代表される免疫療法が開発されてきた。ICI療法開発のために実施された臨床試験では,無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)における延長効果が確認され,効果の長期継続に大きな注目が集まっている。PFSやOSは,統計的にはイベント発生までの時間,すなわち生存期間として統一的に扱うことが可能である。新治療と標準治療の群間比較において,TTEデータはKaplan-Meier法を用いて治療群ごとに生存曲線にまとめ,生存期間中央値(MST)やX年生存割合(率)を計算する。さらにハザード比(HR)とその信頼区間を算出し,ログランク(log-rank)検定を用いて有意差検定を行ってきた。しかしながら,これら従来通りの解析方法ではICI療法の特徴であるPFSやOSの延長持続効果,すなわちテールエフェクト(tail effect)を適切に評価できないことが指摘されてきていた1)。また,生存曲線の群間比較の際にこれまで解析上の前提としてきた,徐々に群間で曲線が開いていく「比例ハザード性」の仮定がICI治療法臨床試験では成り立たない事例が多く出現した2)-4)。すなわち,HRやlog-rank検定だけでは,ICI療法の効果を十分に,また的確に評価できなくなったといっても過言ではない。
そこで本稿では,最近注目を集めている解析評価手法の1つである「期限付き平均生存期間(restricted mean survival time;RMST)」2)-4)について説明する。RMSTは事前に規定した特定の時点までの生存曲線下面積で評価する。2節では,これまで生存曲線を評価するために用いてきた統計的指標を復習し,3節でRMSTを説明する。4節では分子標的薬療法,ICI単剤療法,ICI併用療法の臨床試験で得られる生存曲線の特徴をまとめ,tail effectの解析評価方法を議論し,最後に5節でまとめを行う。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。