Theme 新しいがん治療のState of the Art Cancer biology and new seeds
造血器腫瘍における遺伝子異常を基盤とした発症機構・分子病態の統合的解明
がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 92-96, 2022
造血器腫瘍の分類は,古典的には細胞形態や免疫形質に基づいて行われてきたが,分子腫瘍学の急速な進歩により細胞起源や遺伝学的背景が重要視されるようになった。DNAマイクロアレイやサンガーシーケンス技術の普及に伴い疾患特異的な発現プロファイルやゲノム異常が報告されるようになったが,次世代シークエンス(next-generation sequencing;NGS)技術の飛躍的な進歩により系統的・網羅的にゲノム解析が行われるようになり,造血器腫瘍の多様な分子病態が急速に解明された。さらに近年では造血器腫瘍における遺伝子パネル検査の開発も進んでおり,予後予測や層別化治療への臨床応用が期待されている。本稿では,急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;AML),急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia;ALL),びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)の3疾患において,これまでに明らかになってきた遺伝子異常や分子病態の全体像について,次世代シーケンス技術を用いた大規模遺伝子解析研究を中心に解説する。
「KEY WORDS」造血器腫瘍,遺伝学的亜型,分子病態,次世代シークエンス,遺伝子発現,遺伝子異常
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