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Theme 新しいがん治療のState of the Art Cancer biology and new seeds

遺伝子融合を標的とした新しいがん治療法の開発

中奥敬史河野隆志

がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 87-91, 2022

プレシジョン・オンコロジーの実現には機能的なゲノム異常を同定し,その異常に見合った分子標的薬を使用することが極めて重要である。受容体チロシンキナーゼ(RTK)はゲノムの構造異常により遺伝子融合を形成し,がん腫横断的に発がん原因となることが知られている。これらの遺伝子融合を検出する技術の進歩により,生物学に基づいた腫瘍の特徴の理解が深まり,活性化チロシンキナーゼを標的とする新しい阻害剤の開発が進んできた。現在では,代表的な肺腺がんの約15%に治療標的となる遺伝子融合がみつかっている。しかし,これらの変異を個別にみると,その有病率は低く,診断や患者集積に困難がある。RTK活性を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤は,この疾患の予後を改善し,治療法を刷新してきたが,治療の継続過程に生じる獲得耐性は治療の限界として問題となっている。ここでは,肺がん等の固形がんにおいてみつかるRTKが関与する遺伝子融合について概説する。
「KEY WORDS」融合遺伝子,がんゲノム医療,分子標的薬,新規治療標的

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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