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Theme 新しいがん治療のState of the Art Round Table Meeting

がん治療のState of the Artと将来

西條長宏赤司浩一朴成和山本信之戸井雅和南博信

がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 75-82, 2022

腫瘍細胞に特異的な分子や遺伝子異常をターゲットとした分子標的治療が登場して20年以上になる。これまでに基礎研究やトランスレーショナルリサーチを通じて,各種がん領域において数多くの薬剤が開発され,臨床試験で有効性が証明されて日常診療に導入されてきた。造血器腫瘍,消化器がん,肺がん,乳がんにおいても分子標的薬によって治療成績は飛躍的に向上してきた。
ゲノム研究の発展に伴い,次世代シークエンサーを用いた解析で希少フラクションに対する薬剤の開発が進み,遺伝子パネル検査の臨床導入が固形がんでも実現した。臓器横断的な遺伝子異常に対するバスケット試験など,臨床開発のストラテジーも変化した。
薬剤のなかでは抗体薬の創薬技術の発達は目覚ましく,モノクローナル抗体のみならず,抗体−薬物複合体(ADC)製剤,2つの抗体を用いたバイスペシフィック抗体などが作られていった。各種ADCは乳がんや胃がん,造血器腫瘍において,生存期間の延長をもたらしている。また広い意味での分子標的薬として,免疫チェックポイント阻害薬の開発はがん治療を劇的に変えたといえる。多くのがん種に対して有効性が証明され,かつ長期生存も期待できる結果が得られている。
分子標的薬の開発により大きな進展をみせたがん領域であるが,今後の治療開発に向け,ゲノム情報の蓄積と活用,理論的背景に基づいた薬剤の組み合わせ,そして国際的な臨床開発への参加が課題となっている。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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