Theme 新しいがん治療のState of the Art State of the art reviews and future perspectives
Ⅲ.分子標的治療 Antibody-Drug Conjugate(ADC)の臨床薬理の新しい展開
がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 69-73, 2022
Antibody-Drug Conjugate(ADC)はペイロードと呼ばれる細胞毒性が強い化合物をリンカーで抗体と結合させた薬物であり,ペイロードを抗体により腫瘍細胞特異的に送達し副作用を軽減し効果を増強できる。造血器悪性腫瘍に引き続き固形がんでも有効性を示し,近年盛んに開発され,今後も抗悪性腫瘍薬開発の大きな部分を占めると予想される。ADCの薬理作用は,抗体,リンカー,ペイロード,腫瘍細胞および腫瘍の微小環境との相互作用に依存し,効果や副作用には,ADCそのもの,抗体,リンカー,抗体から遊離したペイロードの動態が重要となる。循環血液中で抗体から遊離したペイロード以外に腫瘍局所で遊離し流出したペイロードが副作用を生じる。ADCのなかには血小板減少などの血液毒性や間質性肺障害が問題となるものもある。ADCは抗体によりペイロードを腫瘍に送達するため,分子標的薬と殺細胞性抗がん薬の両者の特徴を併せもつ中間的な存在といえ,その使用にあたっては臓器障害時や薬物相互作用に関する臨床薬理学的情報が重要となる。
「KEY WORDS」抗体-薬物複合体,ペイロード,薬物動態,臓器障害,薬物相互作用
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。