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Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 News and Topics【TOPICS】

腫瘍免疫微小環境における代謝機構

藤本優里河口浩介

がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 136-139, 2022

腫瘍をとりまく腫瘍免疫微小環境(tumor immunemicroenvironment;TIME)とは,腫瘍組織やその周囲を構成する免疫細胞,腫瘍関連線維芽細胞,腫瘍血管などのさまざまな細胞・非細胞成分から構成され,腫瘍細胞の免疫逃避機構,増殖・転移機構をサポートする一方,腫瘍の排除,normalizationに関する働きもあることが報告されている1)。TIMEに存在する免疫細胞には多形核細胞,マクロファージ,T細胞,ナチュラルキラー(NK)細胞,樹状細胞(DC),B細胞などがある。
たとえば,制御性T(Treg)細胞はNK細胞に働きかけ,免疫抑制的に働く。また細胞傷害性T細胞のCD8T細胞の腫瘍内への浸潤は乳がんや悪性黒色腫,膀胱がん,卵巣がん,大腸がんなどさまざまながん腫で予後良好因子の1つと考えられている2)。Tregは細胞傷害性Tリンパ球抗原(cytotoxic T-lymphocyte antigen;CTLA)-4やprogrammed death(PD)-1を発現しており,抗原提示細胞のB7の発現を抑制してエフェクターT(Teff)細胞の活性化を抑制する3)。そのT細胞の分化や機能において代謝機構が重要な役割をもつことがわかってきている。それぞれのT細胞はサブタイプ特異的な代謝機構を活性化させており,それを障害するとT細胞の生存率や機能の低下につながることが明らかになっている。活性化されたT細胞は解糖系とグルタミン酸系の代謝を活発化し,tricarboxylic acid(TCA)結合型酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation;OXPHOS)よりも好気性解糖系を優先させ,ATPの産生と生合成を行う4)。対照的にTregはその生存と分化をOXPHOSと脂肪酸酸化(fatty acid β-oxidation;FAO)に依存する5)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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