<< 一覧に戻る

Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 News and Topics【TOPICS】

乳がんの遺伝学的検査の現状と課題・今後の展望

関根悠哉桃沢幸秀

がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 133-135, 2022

乳がんのリスク遺伝子であるBRCA1,BRCA2に病的バリアントを有することで乳がんの発症リスクが約10倍程度上昇することが知られている1)。特に,2013年に米国の俳優であるアンジェリーナ・ジョリー氏がBRCA1の病的バリアント保有者であること,さらに予防的乳房切除を実施したことを公表2)し,病的バリアントと乳がんの関連について一般に広く知られるきっかけとなった。さらに,最新のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン3)で切除不能再発または転移性乳がん症例の標的治療として,BRCA1,BRCA2の病的バリアント保有者に対してオラパリブやtalazoparib(日本未承認)の使用を“Preferred”とするなど,病的バリアントの有無に応じた治療が本格化している。また日本においては,オラパリブがBRCA1,BRCA2の病的バリアントを有する特定の乳がん患者の治療として2018年に保険収載され,また2020年には病的バリアント保有者に対しての予防的乳房切除術も保険収載されるなど,ゲノム医療が実現している最中である。
さまざまな研究によりBRCA1,BRCA2以外のリスク遺伝子も同定され,また各々の病的バリアント保有者の有する特徴的な臨床所見が見出されている。しかし,医療に直結した飛躍的に進展する領域であるが,いまだ探求すべき課題が多く残されており今後も継続した研究が求められる現状である。今回は,乳がんの遺伝学的検査をテーマに現状と課題,今後の展望についてわれわれの私見も踏まえて論じる。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る