Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 Learn more from previous clinical trial
切除可能非小細胞肺がんに対する術前補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬の有効性―CheckMate816試験・NEOSTAR試験の結果から―
がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 125-128, 2022
切除可能肺がんに対する術前補助化学療法は,術後補助化学療法のエビデンスが早く確立したことから1),複数の第Ⅲ相臨床試験が早期中止され,エビデンスの質・量ともに術後補助化学療法と比較して十分ではない。しかし,臨床病期Ⅰ~ⅢA期切除可能肺がんを対象とする術前補助化学療法に関するメタアナリシスにより,プラチナ併用化学療法による術前補助療法後手術は手術単独と比較して有意に予後を改善することが報告されている2)。
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し,ニボルマブによる術前補助療法のパイロット試験で安全性と実行可能性が2018年に報告されて以来3),ICIを用いた周術期治療の臨床試験が多数実施されている。ICIを用いた術前補助療法のメリットは,術後より高い治療コンプライアンス・リンパ流路の保持などから強い腫瘍免疫効果が期待できることではあるが,デメリットとして病勢進行や術前補助療法の副作用により手術移行ができない場合があるため,臨床試験の解釈には注意が必要である4)。現在,ICI・化学療法併用後手術と化学療法単独後手術を比較検証する第Ⅲ相臨床試験として,ICIを術前のみ投与する試験と,ICIを術前・術後の両方で投与する試験が行われ,前者として,CheckMate816試験(ニボルマブ),後者として,KEYNOTE671試験(ペムブロリズマブ),IMpower030試験(アテゾリズマブ),AEGEAN試験(デュルバルマブ),CheckMate77T試験(ニボルマブ)が実施されている。さらに高い治療効果を目指したICI 2剤を併用する第Ⅱ相臨床試験(ニボルマブと抗CTLA-4抗体であるイピリムマブを用いるNEOSTAR試験,ニボルマブと抗LAG-3抗体であるrelatlimabを用いるNEOpredict-Lung試験,アテゾリズマブと抗TIGIT抗体であるtiragolumabを用いるGO42501試験など)や,局所制御のさらなる向上を目的としてICIと化学放射線療法を併用する第Ⅱ相臨床試験(WJOG12119L試験など)も複数実施されている4)5)。
本稿では,切除可能肺がんにおける術前補助療法としてのICI治療の最新の臨床試験の結果として,2021年のAmerican Association for Cancer Research(AACR)Annual Meetingで,Initial reportが報告されたCheckMate816試験6)と,2021年の『Nature Medicine』誌に掲載されたNEOSTAR試験7)について概説する。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。