<< 一覧に戻る

Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 Pharmacogenomics and biomarker

リン酸化プロテオーム解析の臨床応用の可能性:リン酸化シグナル伝達の網羅的解析

平野秀和足立淳阿部雄一

がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 104-108, 2022

近年の質量分析計の発展によって,生体機能の調節を担う蛋白質の質的・量的な変化を一斉に測定する網羅的プロテオーム解析が可能となった。リン酸化は蛋白質の機能調節や細胞内のシグナル伝達において重要な役割を果たす翻訳後修飾である。網羅的リン酸化プロテオーム解析は,がんのシグナル伝達異常の全体像を俯瞰することが可能な情報を提供する。細胞株や臨床検体を用いた網羅的リン酸化プロテオーム解析は,がんにおける機能異常,薬剤耐性メカニズム,新規治療標的の探索に活用されている。組織内のリン酸化蛋白質の存在量は少ないことから,過去の研究におけるリン酸化プロテオーム解析の主な試料は手術検体となっている。生検検体を用いるリン酸化プロテオーム解析手法の開発によって,個々の患者における治療前後の動的なリン酸化変動情報を活用した次世代精密医療の確立が期待される。
「KEY WORDS」質量分析計,リン酸化プロテオーム解析,シグナル伝達,精密医療

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る