<< 一覧に戻る

Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 Cancer biology and new seeds

光免疫療法

榎田智弘田原信

がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 60-64, 2022

近赤外線光免疫療法(NIR-PIT)は,がん細胞を選択的かつ迅速に破壊するとともに免疫原性細胞死による自然免疫および適応免疫の活性化を誘発する革新的ながん治療法である。現在までに上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする抗EGFR抗体(セツキシマブ)と近赤外蛍光色素[IRDye®700DX(IR700)]を結合させたセツキシマブ サロタロカンナトリウム(アキャルックス®,RM-1929/ASP-1929)が複数の臨床試験で評価され,切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対して日本で承認されている。現在,従来の治療法に抵抗性を示す再発頭頸部がん患者を対象に,医師が選択する標準治療とアキャルックス®を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験(LUZERA-301)が進行中である。さらに,がん細胞や制御性T細胞などの免疫抑制系細胞に選択的に発現する抗原を標的とした抗体を用いることで,より多くのがん種を治療対象とすることも期待される。また,他の免疫療法と組み合わせることで抗腫瘍免疫応答の増強を図ることもできる。進行性胃がんまたは食道がん患者を対象にアキャルックス®と抗PD-1抗体(ニボルマブ)併用療法が第Ⅰb/Ⅱ相試験(EPOC1901)で評価されている。NIR-PITは,従来の治療法が適応とならないがん患者にも有望な治療選択肢となりうる。
「KEY WORDS」光免疫療法,RM-1929/ASP-1929,IR700,頭頸部がん

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る